第1回 単相電力計と電力基礎知識【電力とは/ 単相、三相/ 基本用語】
第2回 単相電力計での実測【電力計構造解説/ 結線/ 設定/ 配線】
第3回 電力測定応用編【待機電力測定/ D/A出力/ ノイズ対策】
人類は紀元前600年ころに天然樹脂の化石であるコハクを布でこすると静電気によって糸くずのような軽いものを引き寄せる現象を発見した。
この発見が電気を知るきっかけになった。1979年にトーマス・エジソンが実用的な白熱電球を発明したことによって、電気が広く使われるようになってきた。
電気の長い歴史はパリ市立近代美術館にあるラウル・デュフィによって描かれた「電気の精」という壁画に電気の発展に貢献した108名の人たちが描かれている。
詳しくは電気学会のホームページ(https://www.iee.jp/blog/la_fee_electricite/)に紹介されている。
電力の利用を事業にするためには正確に電力の量を測定して課金する要求が生じたため、積算電力計が作られるようになった。
現在の電力測定器は消費電力を測定するだけではなく、電力に関わるさまざまな量も測れるようになってきた。
電気エネルギーは効率的に遠くまで送ることができ、電気エネルギーから運動エネルギー、熱エネルギー、光エネルギーなど他のエネルギーへ容易に変換できる特性を持っているため、すべてのエネルギー消費の中に占める電力の割合は増加する傾向にある。
高性能な電池の登場によって電気エネルギーの保存ができるようになり電気自動車など新たな用途が生まれている。
(注1) 電力化率(%)=電力消費/最終エネルギー消費×100
(注2) 「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値について算出方法が変更されている
出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」
図1.日本の電力化率の推移
今回の記事では横河電機から電力計測事業を引き継いでいる横河計測のベーシックな単相電力計WT310Eを主に使って単相電力測定の基礎を解説する。
図2.ベーシックな単相電力計 WT310E
今回の記事執筆ではエヌエフ回路設計ブロック様、メトロン技研様、東京精電様のご協力を頂いた。
消費電力と積算電力の測定
電力計が登場した当時から最も多く使われるのが、交流電源で動作する機器や装置の消費電力と積算電力の測定である。
消費電力測定では電力以外に電圧、電流、周波数、力率などが同時に測定される。
測定対象によって精度、周波数帯域、入力数などが異なるだけではなく、機器や装置が安定した状態の消費電力を正確に測定するためと、瞬時に変化する電力を測定するなど測定の目的に応じた電力計が登場している。
図3.用途に応じたさまざまな電力測定器
電力高調波の測定
現在主流のディジタル演算方式電力計は電圧と電流の波形を取り込んでから演算によって電力を求める方式であるため、電圧や電流の波形を周波数分析することもできる。
多くの電源系統に接続される電気機器の内部にはスイッチング電源やインバータ装置などが組み込まれているため、電気機器から電源系統にノイズが伝導される。
このノイズは電源系統に接続されたほかの機器や装置に影響をおよぼすため、国際規格で発生するノイズの限度値が決められている。
この測定には電力計が使われている。
図4.低周波EMCエミッション試験システム(株式会社エヌエフ回路設計ブロック)
【電源高調波ノイズ測定について詳しく学びたい方へ】 |
鉄損の測定
モーターやトランスなどの磁気応用製品に使われる電磁鋼板の鉄損測定を行うために電力計が持つ掛算の機能が使われる。
鉄損測定には材料を固定する治具などが必要となるため、磁性材料の測定を専門に行う測定装置メーカーが専門的な知識や測定ノウハウを持っている。
図5.トロイダルコア鉄損テスター(メトロン技研株式会社)
【鉄損測定について学びたい方へ】 |
実稼働状態のリアクトルの損失測定
機器や装置に組み込まれたリアクトルで発生する主な損失(鉄損+銅損)を実際の駆動波形を使って測定する場合に電力計が使われる。
実際に機器や装置のなかでのスイッチング素子によるリアクトル駆動波形には高い周波数成分が含まれているため、周波数帯域の広いプレシジョンパワースコープPX8000やプレシジョンパワーアナライザWT5000を利用することが望ましい。
図6.電力計を使った実稼働状態のリアクトルの損失測定
詳細は、アプリケーションノート「実稼働状態のリアクトルの損失およびインピーダンス測定」を参照して欲しい。
https://tmi.yokogawa.com/ jp/ library/ resources/ application-notes/ loss-and-impedance-measurements-of-reactors-in-operation/
電力とは
電力と呼んでいるものは機器や装置で単位時間あたりの消費される電力(W:ワット)、もしくは一定時間に渡って機器や装置を使った時の電力量(Wh:ワット時やWs:ワット秒)のいずれかである。
消費電力量は積算電力とも呼ばれて電気料金の請求に関わるエネルギー量である。
物理学で仕事量(J:ジュール)とは1Wh=3,600J(1Ws=1J)の関係がある。また熱化学での熱量(cal:カロリー)は1Wh=860カロリーや1Ws=1J=0.239カロリーの関係が成り立つ。電力は物理学では仕事率と表現される。
例えば、直流の電池を使って一定の時間に渡って抵抗体に電流を流して、発生する熱によって水を温める実験が中学の物理の授業で行われている。
下図では直流の10V×2A=20Wの電気エネルギーを105秒間に渡って通電させて、100gの水を温める実験である。
水に与えたエネルギーは20W×105秒=2100W秒=2100Jとなる。1gの水を1℃温めるのは4.2Jのエネルギーが必要であるため、100gの水を1℃上昇させるには420Jのエネルギーが必要になり、2100Jのエネルギーを加えると水は5℃上昇する。
この実験では仕事率20Wで105秒間エネルギーを水に与えると温度を5℃上昇させる仕事をしたことになる。
図7.中学で習う直流電力で水を温める実験
直流の電力
電力とは電圧×電流で定義されている。電池のような安定した電源に抵抗器を接続した場合は抵抗の両端の電圧と流れる電流をディジタルマルチメーターなどの直流測定器で測ることによって正確な消費電力を測定することができる。
また直流から交流まで測定できる電力計でも消費電力の測定ができる。
安定した電源と抵抗や電子負荷装置を接続した回路での積算電力は電力×時間で得ることができる。
充電式のニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛バッテリなどに蓄えられる電力エネルギーの容量は電流×時間(Ah)で表現される。
これらの電池は下図のような特性を持っており、電池メーカーのカタログには電池の容量がAhで表現されている。直流から測定可能なWT310EではAhの測定ができる機能を持っている。
放電性能(単3形、500 mA、周囲温度25℃での連続放電)
エネループ プロ | エネループ | エネループ ライト | ||
電池容量 | 単1サイズ | - | 6000 mAh | - |
単2サイズ | - | 3200 mAh | - | |
単3サイズ | 2500 mAh | 2000 mAh | 1050 mAh | |
単4サイズ | 930 mAh | 800 mAh | 680 mAh | |
充電と放電のくり返しが 可能な回数 |
約150回 | 約600回 | 約1500回 |
出典:エネループ(ニッケル水素電池)紹介ホームページ(パナソニック株式会社)
図8.ニッケル水素電池の放電特性と電池容量
マンガン電池やアルカリ電池などの乾電池では、接続した機器の消費電流の大きさによって電池から取り出せる電力エネルギーが異なるため、電池メーカーによっては電池容量が示されていない。
交流の電力
交流の場合も直流と同じで電力=電圧×電流であるが、電力会社から供給される交流は50Hzもしくは60Hzで変化する正弦波の電圧源であるため、瞬時的な交流電力は時間とともに変化する。
電力計で測定される電力値は瞬時的な電力波形を平均化して表示するものである。
抵抗負荷における直流での電力測定と交流での電力測定には下図に示すような関連があり、入力となる電圧源の実効値が同じで、同一の抵抗負荷であれば電力値も同じになる。
例えば100Vの直流電源に抵抗負荷である白熱電球を接続した場合と、実効値100Vの交流電源に接続された白熱電球の消費電力は同じとなり、明るさに差は生じない。
直流回路の波形
交流回路の波形
図9.抵抗負荷での直流と交流の電圧、電流、電力の波形
交流では負荷の特性によって電流の位相が異なるため、ここでは電圧と電流の位相が同じになる抵抗負荷の場合とした。
容量成分やインダクタンス成分を持つ負荷の場合は位相を考慮した考え方が必要となるので後ほど解説を行う。
直流成分を含む交流電力
電力計を用いて測定する交流電圧や交流電流の波形は正弦波だけとは限らない。例えば交流電源から直流電源を作る際に使われるダイオードを用いた整流回路がある。
半波整流回路
全波整流回路
図10.ダイオードを用いた半波整流回路と全波整流回路
整流回路が抵抗負荷に接続された場合の電圧波形は下図のようになり、その波形をフーリエ級数展開して周波数分析すると直流成分と交流成分によって構成されていることが判る。
表1.整流波形の周波数成分
出典1:さまざまな交流波形のフーリエ級数展開まとめ(電気の神髄)
https://denki-no-shinzui.com/summary-fourier-transform/
出典2:物理情報数学 C 演習問題(慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 足立研究室)
https://arx.appi.keio.ac.jp/wp-content/uploads/2012/09/mathc6.pdf
このような直流成分を含んだ交流波形の電力を測定する場合は直流から交流まで測定できる電力計が必要となる。
また外部に電流センサーなどを利用する場合も直流から交流まで測れるものを選ぶ必要がある。
電力ネットワークの仕組み
電力会社から供給される交流電力は発電所で作られた電力が高圧線によって住宅や工場などの近くの変電所まで三相交流で送電され、そこから住宅や工場に三相や単相で配電される仕組みになっている。
発電所は電力の主な需要地である都市から離れた場所に設置されることもあるので、発電所から供給される電圧を高くして伝送による損失を少なくしている。
出典:電気が伝わる経路(電気事業連合会のホームページ)掲載図をもとに作成
図11.発電所から電力の需要家までの電気の流れ
【日本での電力送電網の歴史を知りたい方へ】 |
単相交流の特長
日本国内において、住宅やオフィスのコンセントの多くは交流100Vの単相である。消費電力の大きな住宅用エアコンやIHクッキングヒーター、電気給湯器は交流200Vの単相で動くようになっている。
これらの交流は三相6600Vの配電線に取り付けられている柱上トランスによって作られている。
図12.低圧単相配電の仕組み
なお、柱上トランスの単相100Vの出力電圧が105Vとなっているのは柱上トランスから住宅などの分電盤までの配線による電圧降下を考慮したためである。
単相100V交流は配線が容易で、簡単な仕組みで電子機器を動かす直流を作り出せるメリットがあるため住宅やオフィスでの主な電源となっている。
三相交流の特長
位相が120度ずれた交流を3本の線で供給している三相交流は工場やビルなど消費電力が大きな設備を持つ需要家に対して供給される電力である。
3本の配線の電圧は同じであるため、合計値は常に0Vになる。
単相交流と三相交流の比較は下図に示す。
表2.単相交流と三相交流の比較
【三相交流について学びたい方へ】 |
世界の交流電源の電圧と周波数
単相や三相の電力は世界中で利用されているが、電圧や周波数は下表に示すように国ごとによって違っている。
海外で電気製品を利用する場合は周波数や電圧値を事前に確認する必要があるが、ノートPCなど持ち歩いて利用する電気製品は世界中の電圧と周波数に対応している。
表3.世界の交流電源の電圧と周波数
出典:世界の電源電圧(オリエンタルモーターのホームページ)を参考に作成
日本国内の交流電圧は100Vで統一されているが、周波数は西日本では60Hz、東日本では50Hzと異なる。
現在では多くの家電製品がいずれの周波数でも動作するように作られているが、安価な電子レンジでは利用できる周波数が決められているため、引っ越しによって使えなくなることがある。
そのほかにも蛍光灯の一部や海外製の洗濯機では周波数指定の製品がある。
機械式電力計器
アメリカ国立標準技術研究所のNIST Digital Archivesの以下のホームページに1900年ころに作られたウェストン社の校正用標準電力計器が紹介されている。
19世紀末ころに機械式電力計器が登場している。
Weston Laboratory Standard Type No. 22 Wattmeter
https://nistdigitalarchives.contentdm. oclc. org/ digital/ collection/ p15421coll3/ id/ 480/
日本では横河電機が創業時の1917年から機械式の携帯用電力計器を開発製造し、2019年末まで販売を続けてきた長い歴史を持つ。
直流や交流を測定する電気計器は下図のように測定パラメータごとに製品が分かれている。
図13.直流・交流の電気量を測定する携帯用計器(横河計測)
機械式電気計器を使って正確な測定値の読取りをするには熟練した技能が必要なことと、人が測定結果を目で読み取るため作業性がよくないという課題があった。
このため電子式の測定器の登場によって電気計器は限られた用途でしか使われなくなった。
アナログ演算方式電力計
第二次大戦後には電気の利用が拡大して多くの家電機器や産業機械が登場し、その中で電力測定の需要も増えていった。
1960年代に横河電機の杉山卓、山口珪紀はアナログコンピュータの開発を行う中から高精度な掛算器を開発して、これを電力計に応用したことが高精度なアナログ演算方式電力計の始まりとなる。
高精度な掛算器の開発はIEEE Transactions on Instrumentation and Measurement (Vol: 17、Issue: 4、1968年12月)に発表され世界で注目されることになった。
また国内でも1972年の全国発明表彰で横河電機の杉山卓、山口珪紀が1965年に出願した時分割掛算器の特許で内閣総理大臣発明賞を得ている。
アナログ演算方式電力計は1970年代から1990年代くらいまで多く使われてきた。
構造は下図に示すように電圧波形と電流波形をアナログ乗算して、その結果を平均化したのちにA/D変換することによって電力値を数値として読み取る仕組みとなっている。
図14.アナログ演算方式電力計の構造
アナログ演算方式電力計の登場によって電力値を指示計器(メーター)の指針ではなく、数値として読み取れるようになり、また通信インタフェースを経由してコンピュータにも接続できるようになった。これにより電力測定の効率化が実現できるようになった。
【アナログ演算方式電力計について学びたい方へ】 |
【アナログコンピュータについて知りたい方へ】 |
ディジタル演算方式電力計
1970年以降になるとさまざまなパワー半導体が登場し、スイッチング電源やインバータなどのパワー制御機器が作られるようになってきた。
パワー半導体の進化によってスイッチングスピードが速くなり、電力測定器に広い周波数帯域が求められるようになってきた。
出典:わが国におけるパワーエレクトロニクスの歴史(電気学会論文誌A Vol.12 No.1 2001年)
図15.パワー半導体デバイスの発展経過
ディジタル演算方式電力計は電圧と電流の波形を直接A/D変換器に取り込んだのちに、演算によって電力を求める方式である。
高速にディジタル演算を行う回路が必要となるが、アナログ演算方式電力計に比べて高い周波数までの波形を取り込むことができる特長を持つ。
図16.ディジタル演算方式電力計の構造
横河電機では1991年に発売した400kHz帯域の電力計2532が最初のディジタル演算方式電力計である。
最近ではディジタル半導体の価格が安くなったため、高い周波数帯域を必要としない電力計でもディジタル演算方式になっている。
ピーク値、実効値、平均値
電気信号の波形を振幅方向のパラメータとしてよく使われるのが、ピーク値、実効値、平均値である。
例えば住宅のコンセントの電圧は理想的には実効値が100Vの正弦波となっている。
ピーク値は実効値の√2=1.414倍となるため141Vとなる。
図17.正弦波の電圧波形でのピーク値、実効値、平均値
平均値は波形を絶対値化して、その波形を平均化することによって得られた値となる。この信号処理は簡単な回路で実現できる。
実効値は波形を2乗してから平均化して√という演算を行って得られた数値となる。
この信号処理を行うには複雑な回路が必要であったが、現在はICによって容易に行える。
平均値
実効値
図18.平均値と実効値の演算
有効電力、無効電力、皮相電力、力率
交流電源に負荷を繋ぐ場合、下図に示すように負荷の性質によって電力波形が異なる。
負荷が抵抗の場合は電圧波形と電流波形が同位相となり、電力波形はすべてプラス側のみに存在することになるため、交流電源によって加えられたエネルギーはすべて抵抗で消費される。
負荷がコンデンサやコイルの場合は電圧波形と電流波形が90°位相が異なるため、電力波形はプラス側とマイナス側を行き来することになる。
これは交流電源によって加えられたエネルギーが負荷では消費されずに充電と放電が繰り返されていることを意味する。
図19.負荷の種類と電圧、電流、電力の関係
実際の電力測定では負荷の特性により、交流電源によって加えられた電圧波形と電流波形の位相は異なる。
そのため負荷で実際に消費される有効電力以外に、負荷と交流電源を行き来する無効電力の測定も必要となる。
それ以外に交流電源が供給する皮相電力の測定も行われる。
有効電力、無効電力、皮相電力の関係は下図のようになる。
また、皮相電力に対する有効電力の比率は力率として表現され、負荷である機器や装置の重要な評価指標となっている。
皮相電力: 交流電源から送り出される電力
有効電力: 実際に負荷となる機器や装置で消費される電力
無効電力: 交流電源と負荷の間を行き来する電力で、負荷では消費されない電力
図20.皮相電力・有効電力・無効電力
特に電源系統に影響を与える指標として力率は装置や機器の評価で重要となる。
電力を多く消費する法人契約をしている工場やビルでは力率が悪いと電気料金の割り増しが生じるので、力率の改善は必須となる。
負荷が抵抗とコンデンサの時の力率測定
力率を理解するために実際の抵抗とコンデンサを使って瞬時の電圧波形、電流波形、電力波形を測定できるPX8000により有効電力と力率の値を求める。
交流電源として正確な交流を発生できる交流電力校正器LS3300を用いた。
抵抗で消費される電力を測定する接続は下図のようになる。
図21.抵抗器に交流を印加した時の電力波形測定の構成
コンデンサは等価直列抵抗 ESR(Equivalent Series Resistance)が小さく理想的なコンデンサに近いフィルムコンデンサを使って実験した。接続は下図のようになる。
図22.フィルムコンデンサに交流を印加した時の電力波形測定の構成
抵抗とコンデンサの測定結果を下図に示す。
抵抗負荷の場合は50Hzの電圧波形と電流波形が同じ位相となり、力率が1となっていることが判る。
一方、コンデンサ負荷の場合はフィルムコンデンサの等価直列抵抗での消費電力が測定され、50Hzの電圧波形と電流波形は位相が約90°ずれており、有効電力はほぼゼロとなるため、力率はほぼゼロとなっている。
抵抗負荷での測定結果
コンデンサ負荷での測定結果
図23.抵抗負荷とコンデンサ負荷での測定結果
積算電力
住宅にはスマートメーターが取り付けられおり、家庭で使った電気エネルギーの量を測定して電力会社は電気料金として課金している。
スマートメーターは30分ごとに電力量を測定して、結果を通信経由で電力会社に送っている。
スマートメーターが測定しているのが積算電力である。
積算電力は電力に時間を掛けた値になるため、積算する時間を決める必要がなる。
実際の測定では積算電力の測定を開始する指令と測定を停止する指令もしくは積算時間の設定が必要となる。
クレストファクター(波高率)
スイッチング電源やインバータなどを搭載した多くの機器や装置では電源回路がコンデンサインプット型になっている。
下図はコンデンサインプット型整流回路のコンデンサの両端の電圧波形と電流波形を示す。
図24.コンデンサインプット型整流回路
コンデンサインプット型の回路では電流波形に大きなピークを持つことになる。大きなピークを持つ波形ではクレストファクター=ピーク値/実効値を知る必要がある。
コンデンサインプット型の機器や装置を交流電源に接続した際の交流電圧と交流電流の波形は下図のようになる。
電圧波形 | |
電流波形 |
図25.コンデンサインプット型の機器を交流電源に接続した際の波形
WT310Eでは測定する波形のクレストファクターに対応した3種の設定があり、クレストファクターが大きい場合は初期値から変更する必要がある。
なお、最近の機器や装置ではPFC(Power Factor Correction)回路が電源に組み込まれているため、クレストファクターが大きくならないように対策が取られている。
高調波ひずみ
コンデンサインプット型のスイッチング電源やインバータを搭載した機器や装置では電流波形が正弦波とならないため、交流電源の基本波以外の周波数成分が現れる。
スイッチング電源の入力電流波形 | |
電流波形 | |
入力電流の周波数スペクトル | |
高調波電流 |
図26.高調波成分を含むコンデンサインプット型のスイッチング電源の電流波形
1994年3月24日に名古屋市立科学館で生じた電気火災が高調波によるものと判ったため、現在では機器や装置から発生する高調波に規制があり、機器や装置を開発する際には必ず決められた方法と手順で測定が行われている。
なお、名古屋市立科学館での電気火災の解説はオーム社が発行する「設備と管理 1995年2月号」にある「高調波障害による直列リアクトル爆発火災」という記事に詳しく解説されている。
最近では電力計をパワーアナライザという名称で販売することが多くなっている。パワーアナライザの明確な定義がないので、測定器メーカーは独自の考え方で電力計とパワーアナライザを分けて販売している。
例えば横河計測では主に電力値を測定するLED表示を持つ製品を電力計(パワーメーター)、電力値の測定以外にさまざまな解析が可能でグラフィック表示を持つ製品をパワーアナライザといって販売している。電力計は生産から開発まで幅広い用途に使われ、パワーアナライザは開発、設計、規格試験に使われることが多い。
表4.横河計測の代表的なパワーアナライザとパワーメーター
パプレシジョンパワーアナライザ WT1800E |
ディジタルパワーメーター WT300E |
|
電力基本確度 (50/60 Hz) |
±(0.05% of reading + 0.05% of range) | ±(0.1% of reading + 0.05% of range) |
測定帯域 | DC, 0.1 Hz ~ 5 MHz(確度保証は1 MHzまで) | DC、0.1 Hz 〜 100 kHz |
入力エレメント数 | 1~6 | 1~3 |
電圧レンジ | 1.5/ 3/ 6/ 10/ 15/ 30/ 60/ 100/ 150/ 300/ 600/ 1000 V (クレストファクター3のとき) |
15/ 30/ 60/ 150/ 300/ 600 V (クレストファクター3のとき) |
電流レンジ (直接入力) |
10 m/ 20 m/ 50 m/ 100 m/ 200 m/ 500 m/ 1/ 2/ 5 A (5 A入力エレメント、クレストファクタ3のとき) |
5 m/ 10 m/ 20 m/ 50 m/ 100 m/ 200 m/ 500 m/ 1/ 2/ 5/ 10/ 20 A (クレストファクタ―3のとき) |
表示器 | 8.4 型カラーTFT LCD | 7 セグメント 4 表示 |
波形表示機能 | 6 チャネル波形表示が可能 | 波形表示効能はない |
ユーザー定義演算 | 最大 20 個 | 最大 4 個の 6 種類の四則演算が可能 |
モーター評価機能 | あり | なし |
高調波測定 | 2 系統の高調波測定が可能 最大 FFT データ長は 8192 |
1 系統の高調波測定が可能 最大 FFT データ長は 1024 |
外形寸法 (W x H x D) ※突起部を除く |
426 x 177 x 459 mm 426 x 221 x 459 mm (/PD2 オプション付) |
WT310E/WT310EH:213 x 88 x 379 mm WT332E/WT333E:213 x 132 x 379 mm |
CTシリーズはそれら電力・効率測定の可能性を広げ、大電流の動作環境下での評価を可能にする電流センサーです。
ディジタルパワーメーターWT300Eシリーズは、コンパクトなサイズに高い測定精度と多彩な機能を搭載した電力測定器です。 歴代の製品からの使い易さと、上位機種からの高度なデータ収集能力を引き継いでおり、生産、評価・試験から研究開発までの幅広い用途にお使いいただけます。
パワーアナライザWT500は、新エネルギー用の電力変換器の評価や、家電、OA機器などの省エネルギー製品の開発に適した、コストパフォーマンスに優れたミドルクラスの電力計です。コンパクトながらもカラーTFTを搭載し、電力基本確度±0.2%、最大入力1000Vrms、40Arms、測定帯域100kHzを実現した単相および三相電力測定が可能です。
持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。
WT1800Eプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。 EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナなどの技術開発や各種規格試験など、 パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。
WT1800Rプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナなどの技術開発や各種規格試験など、パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。
多くのお客様とともに培った高精度な電力測定技術と、長年オシロスコープの開発を支えた波形測定技術の融合により、電力測定に変革をもたらす新たな高精度電力測定器が誕生しました。PX8000は、電気エネルギーを正確に測定するために、相反する「高精度な電力測定」と「時間軸の分解能を上げた波形測定」の2つの命題を1台で解決へと導きます。
交流電力校正器 LS3300は、高確度・高安定・広出力の交流電力校正器です。
LCDを採用し出力値や設定条件の視認性を向上させるなど校正作業の効率を上げる工夫を施しました。