OSA: 前方励起ラマン増幅器のブリルアン散乱光測定

概要

ラマン増幅器は、光通信における伝送距離の延長に重要な役割を果たします。前方励起は、伝送距離のさらなる延伸を可能にするラマン増幅技術ですが、強い信号光によって引き起こされるブリルアン散乱が問題になることがあります。そのため、信号光の強度を適切に調整し、ブリルアン散乱を抑制することが必要です。非常に高い光学性能を持つAQ6380 光スペクトラムアナライザは、信号光に近接した微弱なブリルアン散乱光のスペクトラム観測に最適です。

ラマン増幅器とは

ラマン増幅器は誘導ラマン散乱を利用した光増幅器であり、励起光源波長から100 nm程度長波長側に離れた光信号を増幅します。励起光源の波長に応じて増幅波長帯域を柔軟に設定できるため、EDFA (エルビウム添加光ファイバー増幅器)などの希土類添加光ファイバー増幅器が対応していない波長帯域に対しても光増幅が可能です。データトラフィックの増加に伴って波長帯域拡張の必要性が高まっており、更なるラマン増幅器の活用が見込まれます。

前方励起と後方励起

ラマン増幅は信号光が伝搬する光ファイバーに励起光を入力することで実現されます。励起光の伝搬方向により、信号光と逆方向に励起光を入力する後方励起と、信号光と同じ方向に励起光を入力する前方励起に分けられます。前方励起は信号光にノイズが乗りやすく低ノイズの励起光源が必要となるため、現在は後方励起が一般的です。

しかし、前方励起と後方励起を組み合わせることで伝送距離を伸ばすことが可能なため、近年は励起光源の低ノイズ化が進められており、双方向励起方式の実現が期待されています。

前方励起によるブリルアン散乱光

光ファイバーに強い光を入力すると、増幅された信号光による非線形光学効果でブリルアン散乱光が生じます。現在一般的な後方励起のみの場合は信号光がファイバ伝搬により十分に減衰された後に増幅されるため、一般的にブリルアン散乱光は生じません。しかし前方励起の場合は信号光の強さが長距離にわたって維持され、積算すると強いパワーになるためブリルアン散乱光が生じることがあります。

ブリルアン散乱光は後方散乱光であり大部分は信号光と逆方向に伝搬しますが、一部は信号光と同じ向きに伝搬します。この信号光とブリルアン散乱光の一部が合波された光スペクトラムを測定することで、ブリルアン散乱光が観測できます。

Fig.1 ブリルアン散乱光の測定系

Fig.1 ブリルアン散乱光の測定系

OSAによるブリルアン散乱光測定

ブリルアン散乱光が生じると、ラマン増幅器による光増幅は信号光だけでなくブリルアン散乱光に対しても行われるため、増幅効果が分散してしまいます。したがって、ブリルアン散乱光が生じた状態では光増幅器のゲインを正確に評価することができません。ブリルアン散乱光が生じなくなるまで光信号強度を減衰させる調整が必要となります。

ブリルアン散乱光が発生した信号光の強度を減衰させると、信号光のピークパワーは概ね維持されたまま、主にブリルアン散乱成分が減衰されます。光スペクトラムアナライザで波形を観測することで、ブリルアン散乱光の生じない適切な信号光強度の調整を容易に行うことが可能です。

AQ6380によるブリルアン散乱光測定

ブリルアン散乱光は信号光から10 GHz (80 pm@1550 nm)程度の間隔で現れ る近接した信号であるため、光スペクトラムの測定には高い波長分解能と広い近傍ダイ ナミックレンジが必要です。AQ6380は以下の理由でブリルアン散乱光測定に最適です。

l最小5 pmの分解能と65 dBの広い近傍ダイナミックレンジ

信号光に近接したブリルアン散乱光を明確に分離します (Fig.2)。

l1200~1650 nmの広い波長範囲

ラマン増幅器はS-bandO-bandなどの様々な帯域で活用されます。AQ6380はそれらのバンドを1台で測定できます。

Fig.2 AQ6380によるブリルアン散乱光測定

Fig.2 AQ6380によるブリルアン散乱光測定

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次世代光ネットワークの研究開発に対応する最高性能モデル

  • 波長範囲:1200~1650nm
  • 波長確度:±5pm
  • 波長分解能設定:0.005~2nm 
  • レベル範囲:+20~-85dBm
  • ダイナミックレンジ:65dB
    (ピーク±0.2nm)

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