OA機器向け電力測定の最適化

OA機器向け電力測定の最適化

背景

化石燃料の枯渇や環境問題を背景に、再生可能エネルギーへの移行や省エネルギー化の推進が求められています。OA機器の中の代表的な製品である複合機は、企業にとって必須の業務用機器となっていますが、紙の使用を減らすことで森林保護に向けた取り組みを行う必要があるとともに、消費電力削減についても重要な課題となっています。複合機の消費電力削減において重要なポイントは、スリープ時、待機時、プリント時の各モードでの消費電力削減です。どのモードにおいても電力変換を行う電源制御は重要な役割を果たします。また、複合機の各モードでは、消費電力を少しでも削減するための制御技術が求められています。

 

課題

複合機のスリープ時、待機時、プリント時の各モードにおける消費電力測定では、微小電流から数アンペアまでの電流測定に対し、適切な電流レンジを選択する必要があります。また、実効値に対して波高値が高い電流を測定することもあるため、適切な電流レンジを選択しなければ、測定電流のレンジ誤差が大きくなってしまう問題が発生します。
さらに、電力測定では電力レンジの設定も重要です。電力レンジは設定される電圧レンジと電流レンジで決まるため、電圧と電流の適切なレンジ選定が電力誤差を減らす上で大変重要な条件になります。したがって、電力計の選定においては確度だけでなく、微小電流から定格動作時の電流までの測定ができる豊富な電流レンジが搭載されていることが、高精度な電力測定と効率的な消費電力削減の検証作業に不可欠となっております。

 

WT5000による課題解決

  • 電力基本確度±0.03%の高精度電力測定
  • 電流直接入力による微小電流からの高精度測定
  • 力率および他の電力項目の高精度測定
  • AC/DC変換、DC/DC変換の高精度効率測定
  • 積算電力量、積算電流量の測定
  • IEC規格に準拠した高調波/フリッカ測定
  • 確度保証された信頼性の高い電力データの活用
  • 電力値と波形データの連続測定による異常確認

WT5000による課題解決

 

WT5000による提案

電力基本確度±0.03%の高精度電力測定

プレシジョンパワーアナライザWT5000は世界最高クラスの測定確度となるトータル±0.03%(50/60 Hz)を実現しています。
また、実効値に対して波高値が高い電流を測定する場合、レンジ誤差を減らすことが必要ですが、電力確度±(0.01% of reading + 0.02% of range) (50/60 Hz)とレンジ誤差も小さく、高精度に電力測定が可能です。電力入力はモジュラー構造で、お客様自身で入れ替えや増設が可能です。3種類のエレメント(定格入力30 A/ 定格入力5 A/ 電流センサー入力専用)から選択いただけますので、広範囲の電流振幅に対応する柔軟な測定を1 台で実現できます。

図1 WT5000エレメント変更時のイメージ

図1 WT5000エレメント変更時のイメージ

 

電流直接入力による微小電流からの高精度測定

30 A高精度エレメント(760901)と5 A 高精度エレメント(760902)は外部電流センサーを使用せずに電流を直接入力できるため、スリープ時、待機時、駆動時の各モードにおける高精度な測定が可能です。
5 A 高精度エレメント(760902)は5 mA、10 mA、20 mA、50 mA、100 mA、200 mA、500 mA、1 A、2 A、5 Aの10レンジと測定レンジが豊富なため、スリープ時や待機時の微小電流測定においても、適切なレンジを選択できます。電力レンジは、設定する電圧レンジ × 電流レンジのため、電圧と電流の適切なレンジ選定が、電力測定誤差を減らす上で重要であり、高精度な測定を実現できます。
また、プリント時に電流変動が大きい場合には、自動レンジ設定機能(レンジアップ、レンジダウン)、待機時からプリント時の測定においてピークオーバーが発生した場合に指定したレンジに変更するピークオーバー発生時設定レンジ指定機能、有効測定レンジを使用状況に応じて選定できる有効測定レンジ選定機能といった便利なレンジ変更機能もあります。

 

力率および他の電力項目の高精度測定

複合機はコンセントなどからの50 Hz/60 Hzの交流電力を、EV内部で直流に変換して電力を供給します。交流電力は電圧と電流、および位相差により電力値が変わるため、位相差を極力なくし、また高調波を抑制することで力率を1に近づけることが重要です。
WT5000は、PFC回路を介した電力値を測定し、力率を演算します。力率以外の項目である電圧・電流・有効電力・皮相電力・無効電力も同時に測定、表示できるので、各項目の変化を同時に確認できます。

図2 電圧、電流、力率、THDなどの表示例

図2 電圧、電流、力率、THDなどの表示例

 

AC/DC変換、DC/DC変換の高精度効率測定

複合機には内部にいくつかの変換回路が搭載されています。そして、通常のAC商用電源に接続するために高調波の抑制が重要となり、PFC回路が搭載されています。また、DC電圧レベルをコントロールする DC/DCコンバータなども内蔵されています。これらの回路に関しては、電力損失を極力減らすための設計が極めて重要です。そのため、多チャネル入力を特長とするWT5000を用いることで、各回路ごとの効率を高精度に測定できます。

 

積算電力量、積算電流量の測定

WT5000は、長時間の消費電力量(Wh)や消費電流量(Ah)を測定する積算機能を搭載しています。
積算機能は、有効電力の積算(電力量)、電流の積算(電流量)、皮相電力の積算(皮相電力量)、および無効電力の積算(無効電力量)があります。

図3 積算電力、積算電流の測定画面例

図3 積算電力、積算電流の測定画面例

 

IEC規格に準拠した高調波/フリッカ測定

WT5000 IEC高調波/フリッカ測定(/G7オプション)をPCアプリケーションソフトウェアの統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8010と一緒に利用することで、IEC61000-3-2に準拠した高調波試験や、IEC61000-3-3に準拠した電圧変動・フリッカ試験を行うことができます。
さらにAC/DC電流センサー CT200の特別モデルを活用することで、IEC61000-3-11およびIEC61000-3-12の相あたり16 Aを超える高調波および電圧変動・フリッカ試験にも対応可能です。

図4 IEC 規格に合致した高調波・フリッカ試験システム

図4 IEC 規格に合致した高調波・フリッカ試験システム

 

確度保証された信頼性の高い電力データの活用

近年は、波形測定器の中に電力データを演算する機能を搭載する機器が増えています。過渡的な現象においてもデータの同時性を確保できるため波形測定器で電力演算を行えることは大変便利であるものの、気をつけなければならない点があります。それは国家標準につながった電力測定値の測定精度です。
波形測定器は電圧プローブ、電流プローブを使って高帯域・高サンプルレートにより測定信号の形状を、より正確に捉えることが主な目的です。したがって、波形測定器を使って電力演算をした結果は電力計で測定したデータとは異なり、測定精度がなく、信頼性については慎重に検証する必要があります。一方、横河計測の電力計は国家標準につながる計測標準を高い精度で確立・維持しており、電力計データの電圧、電流、有効電力などにおいて信頼性の高いデータを提供しています。
統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000は、電力トレーサビリティ*の取れたWT5000による電力計測とともにDL950による最速20 MS/s、8チャネルのデータ転送を可能としており、信頼性の高い電力計データと波形データを、同一時間軸上に同時表示できる点がメリットとなっております。
* 電力のトレーサビリティ:高精度電力計WT5000の性能を支える校正技術について
「高精度電力計を支える横河電機の電力校正技術」

図5 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

図5 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

 

電力値と波形データの連続測定による異常確認

電圧・電流・電力などのデータを長時間連続で測定する必要がある場合、IS8000を利用することで、リアルタイムに電力パラメータのトレンドを確認し保存できます。さらに、WT5000のデータストリーミング(/DSオプション)を用いることで、数値データだけでなく波形データも同時に観測し保存できます。
たとえば、電力値で異常があった箇所を拡大することで、その時点の波形データをWT5000 1台で確認できます。

図6 IS8000による電圧・電流・電力トレンド表示

図6 IS8000による電圧・電流・電力トレンド表示

図7 電力値の低下部分の拡大による異常波形確認

図7 電力値の低下部分の拡大による異常波形確認

 

その他測定器による複合機の開発支援

DL950
長時間データ記録と信号異常時の高速測定

多チャネル絶縁型波形観測器となるスコープコーダDL950のデュアルキャプチャ機能は、異なるサンプルレートで波形を捉えられます。長時間のトレンドを把握するために低速サンプリングでデータ収集を行いながら、突発的な過渡現象を高速サンプリングで波形捕捉できます。
さらにIS8000を利用することで、得られた波形データをWT5000の電力の数値データとIEEE1588で同期させて表示でき、電力変動時の波形観測がより詳細に行えます。

図8 DL950デュアルキャプチャ機能による測定例

図8 DL950デュアルキャプチャ機能による測定例

 

DLM3000HD/DLM5000HD
PFC回路の波形観測

電源やPFC回路の動作確認には、波形観測用として性能と操作性に優れた高分解能オシロスコープDLM3000HDや8チャネル入力のDLM5000HDが活用できます。

PFC回路の波形観測

関連業種

関連製品とソリューション

プレシジョンパワーアナライザ WT5000

持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。

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