IEC61000規格に準拠した高調波および電圧変動・フリッカ測定 〜測定条件からレポート出⼒まで簡単に試験実施〜

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000 

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

1. 背景Introduction
 50/60Hzの商用電源波形はほぼ正弦波であるが、インバータ駆動するモーターやスイッチング電源などの機器を商用電源に接続すると、50/60Hzの整数倍の周波数成分が機器から発生し、商用電源にひずみを生じさせる。この高調波成分を含んだひずみ信号が電源ラインを介して他の家電機器やOA機器に印加されると機器の過熱、誤動作など様々な悪影響が出る。

また、冷蔵庫のコンプレッサが動作した瞬間に機器に流れる電流が瞬時的に増加し、電源の電圧降下が起きる。この負荷の変動により、たとえば照明機器(白熱電球)がちらつく現象が起こり人間に不快感を与える。

 このような高調波および電圧変動、フリッカを抑制するため、高調波規制、および電圧変動/フリッカ規制がある。

 高調波/フリッカ規格試験では、詳細な測定方法および電源電圧設定などが定められている。その一方で、規格内容の見直しが適時行われており、最新の規格適合試験を行うためには特別な知識と最新の情報を確認することが常に必要となっている。

2. 課題Challenges
 高調波電流・電圧変動/フリッカ測定はIEC規格試験に基づいた高精度な電流・電圧測定できる電流測定器(電力測定器)を使う必要がある。また、IEC規格の種類はIEC61000-3-23-3-113-12があるそれぞれ測定手順や規格値が変わるため規格を熟知していたとしても非常に煩雑な手順となる。
たとえば、規格
測定中は対象機器に供給する電源をONにしておくが、測定対象を変更するとき、あるいは試験終了したときは電源をOFFしておく場合もある。しかし、電源ONのまま対象機器を入れ替えてしまったり、測定手順を間違え試験中にOFFにしてしまうこともあるので注意しなければならない。
電源ON/OFF操作も適切なタイミングで操作しないと再試験をしなければならないことがあるため非常に重要である
また、IEC61000-3-2規格では、測定する試験対象機器の判定クラスABCDを間違えてしまう場合もある。このような場合は通常、再試験をしなければならず、さらに時間と労力を費やすこともある。
このようにIEC規格試験はさまざまな条件設定や操作手順を確実に実施しなければならないが、人為的なミスも発生しやすい。したがって、特別な知識がなくても条件設定から最終的な試験結果であるレポート出力まで簡単に実施できる規格試験ソフトウェアが求められている。

3. IS8000による課題解決Solution

IEC規格/JIS規格に対応
試験メニューの簡単設定*
高精度電力測定によるPASS/FAIL判定*
電源コントロール機能を標準装備し簡単試験*
合否判定と測定結果データを詳細解析可能*
高調波電流/フリッカを時系列にトレンド表示
レポート出力機能
*IEC61000-3-2規格の試験のみ解説

 

IS8000による課題解決

4. IS8000による提案Detailed description
4.1 IEC規格/JIS規格に対応
IS8000高調波測定、電圧変動フリッカ測定については以下の規格に対応している*
○高調波規格
IEC 61000-3-2: Ed3.0 (2005), Ed3.0 A2 (2009)
IEC 61000-3-2: Ed4.0 (2014), Ed5.0 (2018)
EN61000-3-2: 2006, 2009, 2014
IEC 61000-3-12: Ed1.0 (2004), Ed2.0 (2011)
EN 61000-3-12: 2005, 2011
IEC 61000-4-7: Ed1.0 (1991), Ed2.0 (2002), Ed2.0 A1 (2008)
EN 61000-4-7: 1993, 2002, 2009
JIS C61000-3-2: 2011
JIS C61000-3-2: 2019
JIS C61000-4-7: 2007

 ○電圧変動 /フリッカ規格
IEC 61000-3-3: Ed2.0 (2008), Ed3.0 (2013)
IEC 61000-3-3: Ed3.0 A1(2017)
EN 61000-3-3: 2008, 2013, 2019
IEC 61000-3-11: Ed 1.0 (2000), Ed2.0(2017)
EN 61000-3-11: 2000, 2019
IEC 61000-4-15: Ed1.1 (2003), Ed2.0 (2010)
EN 61000-4-15: 2003, 2011

  *20212月現在

図1 規格試験メニュー画面

1 規格試験メニュー画面

4.2 試験メニューの簡単設定
スタンダードメニューとして5 種類の試験メニューが用意されている。初めて試験を開始するときには「新規測定」、測定したデータの解析・再解析を行うときは「保存データ解析」、データを読み出しレポート出力するときは「保存データ印刷」、1回の試験が終わったら同じ試験を何回か繰り返す試験を行い試験データの繰り返し性を確認するときは「繰り返し測定」、従来モデルから仕様がほとんど変わらないマイナーバージョンアップ時の試験を行う「簡易試験測定」から選択できる。手順通りに進めることで最終的なレポート出力(データ保存)まで簡単に行うことができる。たとえば、新規測定であればWT5000PCとの通信接続から始まり、設定、測定、解析、レポート印刷、データ保存を行い終了まで手順通りに進められる。
試験データの解析については、基本的にデータの確認作業であるため、総合判定がPASSであれば特に試験結果を解析する必要はない。また、簡易試験測定では以前試験した従来モデルの適合試験データを読み込むだけで簡易試験が認められる条件を満たしているかどうかを自動的に判定できる。条件を満たしていない場合はメッセージが表示され、簡易試験では対応できない仕組みになっており試験のミスを防ぐことができる。

図2 規格試験の測定メニュー画面

2 規格試験の測定メニュー画面 

4.3 高精度電力測定によるPASS/FAIL判定
 クラスABCDを試験対象に合わせて設定し、設定したクラスの判定基準にて自動的に合否を判定できる。測定値リスト表示だけでなく高調波次数ごとの限度値や合否の判別を色で識別できる測定値判定グラフも表示できる。さらに、保存したデータファイルを読み込み、クラス変更を行い再判定ができる便利な機能も搭載している。特にクラスAのエアコン600W以上(JIS規格)クラスCの照明25W以上、クラスDの冷蔵庫600W以上の消費電力かどうかを判断する試験では精度の良い電力測定(高精度電力計)が有効となる。
WT5000
を使えば有効電力を世界トップクラスの高精度で測定できる。また、クラスCでは力率のチェックも必要となるがこれも測定することができる。回路力率は、有効電力÷皮相電力で求められるため、WT5000を使うことで、より正確な力率を算出*できる。
*ユーザーが値を指定して適合試験を行うことも可能

図3 高精度電力計の電力値を使った試験結果例

3 高精度電力計の電力値を使った試験結果例

4.4 電源*コントロールにより簡単試験(標準装備)
 IEC規格試験では被試験機器に電源を供給し試験を行うため、電源ON/OFFとソフトウェアの連動は安全な試験手順において重要である。IS8010 IEC高調波/フリッカ測定ソフトウェアはGP-IB通信*を使うことでプレシジョンパワーアナライザWT5000およびエヌエフ回路設計ブロック社製ESシリーズ電源あるいはDPシリーズ電源をEMC試験室の外からリモートコントロールしながら安全な試験できる。
 また、電圧変動/フリッカ測定では電源に加えてRIN(リファレンスインピーダンスネットワーク)ES4152(単相用)またはES4153(単相/三相用)(ESシリーズ用)を使った試験が必要となるが、こちらもIS8000からのコントロールができる。

*株式会社エヌエフ回路設計ブロック製電源は、電源環境シミュレータ ESシリーズ、プログラマブル交流電源 DPシリーズ
http://www.nfcorp.co.jp/pro/ps/ac/sim/es/feature2.html
*WT5000のみの操作はEthernet通信とUSB通信が可能

図4 電源、RINの設定画面

4 電源、RINの設定画面

4.5 合否判定と測定結果データを詳細に解析可能
 IEC規格試験では合否判定結果が重要である。一方、試験条件の保存、実際に取得した試験データをファイルとして保存しておくことも重要となっているたとえば、後日、レポートの記載内容を確認して高調波データに限度値に近い値などがあればソフトウェア上に試験データを読み出し、その高調波データが、いつ、どのタイミングで発生していたのか確認できる。
機器の設計者は規格の限度値近くで合格した1回の試験結果がPASSであったとしても同じ試験を何回か行うことがある。その背景として対象機器の電流値、消費電力は全く同じではなく変動があるのでFAILになる不安があるためである。結果として対象機器にばらつきがあり、実際に認証機関などで試験を行ったときに不合格になってしまうことがある。そのため、規格上の限度値は固定であるがIS8010 IEC高調波/フリッカ測定ソフトウェアでは限度値に対する余裕度をパーセントで指定できる機能も搭載している
 たとえば、限度値が1Aの場合、余裕度を10%と設定することで限度値0.9Aに対して判定*を行うことができる。
さらに呼び出した試験データによりJIS規格とIEC規格両方を判定、あるいはEditionを選択しそれぞれのEditionで判定することもできる*全試験データはEXCELなどで活用できるCSVデータでの保存も可能である。

*IEC61000-4-7規格に関わる測定手法の違いがある場合などは変更できない機能、仕様もある。
*規格適合試験では余裕度はゼロでの試験が必要

4.6 高調波電流/フリッカを時系列にトレンド表示
 高調波成分は次数ごとに限度値が設定されているが測定時間内で高調波成分が増減することがある。最終的に合格となった被試験機器においても限度値ギリギリとなる機器動作タイミング、あるいは不安定な高調波次数もある。時系列トレンド表示は、これらの次数データを時系列に表示することで機器動作と高調波データの相関関係を確認できる非常に有効な機能である。また、高調波電流だけでなく、電圧、電力、力率の高調波成分のトレンド表示もできるので、たとえば電流と電圧、電力と力率の相関なども詳細に確認できる。フリッカ測定に関するdcdmaxTmaxなどのトレンド表示も確認できる。

図5 トレンドグラフ解析(第3次高調波変動の例)

5 トレンドグラフ解析(第3次高調波変動の例)

表1 200msごとの高調波測定データ例(CSVデータ)

表1 200msごとの高調波測定データ例(CSVデータ)

表2 各次数の限度値と測定結果例(CSVデータ)

2 各次数の限度値と測定結果例(CSVデータ)

4.7 レポート出力機能*
IEC高調波あるいはフリッカ測定試験の試験結果は報告書として作成できる。40次までの電流成分の数値表示およびバーグラフにより限度値と測定値を一緒に表示できるレポートは見やすく、また、報告書タイトル、コメントの記入や日本語、英語の選択もできる。レポート出力はPDF形式で保存できるので、PC内に整理して保存しておくことできる。
*IS8010のレポート出力機能はサブスクリプション、および買い切り版で標準装備

図6 IEC61000-3-2規格試験のレポート例

6 IEC61000-3-2規格試験のレポート例

*掲載されている画像等は実際の製品とは一部異なる場合があります。
*本アプリケーションの仕様は測定チャネル数や測定条件などにより制限されることがあります。  
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