アクチュエータは、産業用機械やエアコン、家電、OA機器をはじめ、自動化設備における駆動部品として、機械の動作を正確に制御するために欠かせない制御機構です。最先端の研究開発の現場では、より高度な制御が求められ、特にアクチュエータの位置制御精度や応答速度が実験結果やシステム全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。このような機器に使用されるエンコーダ付きアクチュエータは、正確な移動量の測定が不可欠であり、これは装置の動作検証や設計段階での重要なデータとなります。
また、アクチュエータの動作中に発生する信号をリアルタイムで解析し、移動量や速度を正確に演算することは、研究開発の効率化に貢献し、システム全体の精密な制御と性能の向上を可能にします。加えて、モーターの回転時にエンコーダパルスをカウントすることで、動作状況を詳細に把握することができ、アクチュエータの高度な制御が実現されます。これらの技術は、エアコンや家電、OA機器、自動車、医療機器、ロボティクスなど多岐にわたる分野で応用され、特に次世代の技術開発において重要な役割を果たすことが期待されます。
産業用機械やエアコン、家電、OA機器において、高精度な動作を実現するためには、モーターの正確な位置制御が重要となります。たとえば、エンコーダ付きアクチュエータの位置制御では、モーターの回転動作をパルス数で管理し、指定された位置へ正確に移動させることが求められます。パルスカウント方式では、モーターが1回転ごとに発生させるパルス数が決まっているため、パルス数に基づき移動量を演算し、アクチュエータの位置を正確に制御することが可能です。
しかし、実際の制御システムでは、パルスカウントによる位置検出だけでなく、モーターの速度や回転数などのパラメータも同時に測定し、システム全体を高精度に制御することが求められています。
エンコーダには相対角度を検知するインクリメンタル形と絶対角度を検知するアブソリュート形の2 種類があります。
インクリメンタル形エンコーダはエンコーダによって出力信号数が異なり、1相タイプ(A相)、2相タイプ(A相、B相)、3相タイプ(A相、B相、Z相)があります。DL950はすべてのタイプで回転角度の算出ができます。エンコーダからの出力はすべてパルス波となっています。A相とB相はエンコーダごとに1回転あたりのパルス数が決まっており、位相が90°ずれて出力されます。A相とB相の出力パターンから回転方向が判別できます。
また、Z相は1回転に1パルス出力されるため、基準位置としての信号になります。DL950では各相の電圧出力された信号を電圧入力モジュールに取り込み、回転角度としてリアルタイムに波形表示できます。
図1 エンコーダ出力とDL950の接続図
図2 エンコーダの回転角度演算測定例
アブソリュート形エンコーダは、複数列のスリットがある円盤が使用されており、各列のON/OFFの出力を合わせて2進数として表現することで絶対位置がわかるようになっています。アブソリュート形エンコーダの出力信号は主にバイナリコードとグレーコードの形式で表されます。DL950ではどちらも最大16 bitまでのエンコーダに対応しています。エンコーダからパラレル出力された信号をDL950のロジックモジュールに取り込み、回転角度としてリアルタイムに波形表示できます。
DL950のリアルタイム演算(/G03オプション)には、30種類以上の演算種類があり、たとえばアップダウンカウントをはじめ、回転角度や回転速度、電気角など、回転体の評価に役立つ演算種類が多く備わっています(図3)。
エンコーダのパルスカウントによる位置制御を行う際には、アップダウンカウント演算が有効です。この演算によりエンコーダのA相もしくはB相のパルスをカウントアップ/カウントダウンすることが可能です(図4)。演算結果はトレンド表示が可能で、A相とB相のパルス信号と一緒に回転速度や回転角度などリアルタイム演算の結果と並べて表示することにより、アクチュエータの正確な位置制御や性能評価に貢献します。
図3 リアルタイム演算の演算定義一覧
図4 設定画面
アップダウンカウント演算の入力信号は、アナログ入力とロジック入力の両方に対応しており、その他の電圧や電流、振動、温度、トルクなども同時に測定することができます。またリアルタイム演算の結果をトリガ条件に設定することも可能です(図5)。
図5 リアルタイム演算の結果例
エンコーダを評価する際、パッシブプローブでA相、B相、Z相を測定することもできますが、ロジックプローブで測定した波形をリアルタイム演算の入力信号に指定することも可能です。
電圧モジュールとパッシブプローブを使用すると、波形の品位を確認することができます。つまり、波形に重畳しているノイズを確認することができます。
一方、ロジック入力モジュール(720230)と高速ロジックプローブ(700986)を使用すると、測定波形が2値化されるため、ノイズ重畳のような波形品位を確認することはできませんが、1つのモジュールで最大8 bit × 2ポート分の波形を取得することができます。
DL950で取得した波形データは、統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000やIS8002CDV(Classic Data Viewer)を使って波形の表示や遠隔操作、データ転送などを行うことが可能です。
図6 エンコーダのA 相、B 相、Z 相の波形
図7 パッシブプローブとロジックプローブによる波形の違い
上段:パッシブプローブによるA 相、B 相、Z 相
下段:ロジックプローブによるA 相、B 相、Z 相
DL950は、DL850E/EVの機能・仕様を大幅に改善し、タッチパネルによる直観的操作を可能した新時代のスコープコーダです。
200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。